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TAKU’s BRAIN vol.7『世界を目指す1stステップ』前編

東京Zのアシスタントコーチとして3年間支え、チーム4年目となる今シーズンより指揮を執る斎藤卓ヘッドコーチ。目指すバスケット、そして今の想いを語る。


Q.開幕をして約1ヶ月半経ちますが、まずは、ヘッドコーチとなった時の心境を教えてください。

3シーズン小野アドバイザーの下でアシスタントコーチを務めさせていただいたのですが、小野さんが培ってきたことを大切にしながら、チームミッションでもある“世界に通用する日本人選手を輩出する”ことをチームのスタイルとしてより明確に打ち出したいと考えていました。
アシスタントコーチの頃とは違い、自分に全ての決定権があるため、自由でやりがいが大きくなったのと同時に責任の大きさ・重さも日々感じています。
応援いただいているファンの皆さんや地域の皆さんをはじめ、支援いただいているパートナー企業の方々や会社の期待も背負っていますので、しっかり応えるためにチーム全員の士気を高められるよう努めています。


Q.新しいチームを作るにあたり、これまでと大きく変わった点はどこですか?

何が一番大きく変わったかと言うと、攻撃の起点になるプレーの考え方を変えました。
昨年はボールがないところでのスクリーンプレーや、外国人選手にローポスト(ゴール近辺)でボールを預けてから展開して得点に繋げるパターンが多かったのですが、もしそれでもシュートチャンスが作れない場合は、ガード陣がスクリーンをかけてもらって中に切れ込んでシュートチャンスを作る、といったスタイルでした。

去年在籍していたウィル・クリークモア選手がポストプレーから得点をしたり、渡邊翔太選手がドライブして得点を取る姿を覚えている方も多いのではないでしょうか。

それに対して今シーズンは、まずボールを持っている選手に対してスクリーンをかけるピックプレーから展開するパターンを増やしています。
シュート確率が高い外国人選手にボールを預けて、まずはその選手のシュートが1stオプション、日本人選手は2ndオプションというスタイルは、得点できる確率は高いかもしれませんが、東京Zのミッションを実現するためのバスケットボールにはそぐわないと判断したからです。

あとはやはりバスケットボールはチームスポーツなので、いかに全員で相手のディフェンスを崩して味方のチャンスを作るか、いかにオープンな選手を作ってそこにボールを供給できるかが大切だと考えているからです。これは小野さんと同じ考え方ですね。
全員が同じイメージを持って誰かがシュートを決めるためにスクリーンをかける、スペースを作る、パスをする。
一つのゴールに辿りつくために必要なプレーがコートにいる全員にあるので、その役割を選手全員が理解して動けるようなチームを作りたいと考えています。


Q.新しいシステムを考えた上で、選手補強も始めたのでしょうか?

選手を決める頃は具体的な形はできていなかったので、重要視したのは“得点の起点になれるかどうか“と“フォアザチームで戦えるか”という点でした。

西山については昔から知っていましたし、長年対戦相手でもあったので、得点力があってアシストもできる選手だということはわかっていました。色々な場面で攻撃の起点になりうる選手なのでどんなスタイルにもアジャストできる、と思いました。河相も同じで得点力があり、キャッチ&シュートで決められるだけじゃなく、自分で状況を打破する力のある選手だったと言うのが大きいですね。

外国人選手は逆に”得点力”ではなく、まず“フォアザチームで戦えるか”というところに注目しました。
「僕、点をとりたいんです。シュートを打ちたいんです。」という選手ではなく、「シュートを打つのは僕じゃなくていい、全員でボールを回してチャンスを作りたい。」というような考え方ができる選手を選びました。

リッチーはLAで初めて会ったのですが、最初は正直「いかつい顔してるなー、こいつ我が強そうだなー」って思いましたね。
でも話をしてみたら「前にいたチームでは全然ボールを回さないで一人でシュートばっかり打つ選手がいて困った。自分はボールを回して全員で攻めたいんだ。」という話をしていて、実際のプレーを見ても、“チームのために自分を捨てて働ける選手”だと言うのが良くわかったので獲得しました。
ルーベンも同様で、昨シーズン対戦相手(バンビシャス奈良在籍)の時に、プレータイムは多くなかったですがウォーミングアップの時から誰よりも声をだして、チームのために自分ができることをしようという姿勢を見ていたので、リッチー同様チームのために働ける選手だなと思ったのが決めた理由です。
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Q.システムを作るにあたり、重視したポイントはありますか?

一番重視したのは、“日本人選手が世界で活躍するためには何が必要なのか”ということです。色んな考え方がありますが、チームミッションを達成するために採用したのが、ピックプレーを起点にする、という考え方でした。
アメリカと比較して身体能力に劣るヨーロッパの多くの国々が採用しているスタイルで、端的に言えば全員がよく動いてボールをシェアし、ピックプレー(スクリーン)を使いながら細かいプレーをつないでいくスタイルですね。
僕自身“日本人選手が世界で活躍するためには何が必要なのか”と思い悩むことも多かったのですが、東頭コーチから

『今は多くのチームで(特に終盤に)外国人選手にボールを預けるのが1stオプション。外国人選手の1on1からできたズレを使って日本人が攻めるのが2ndオプション、というスタイルのバスケットボールをしている。
でも日本代表になったらその役割を担っていた外国人選手はいないし、試合終盤でも日本人が1stオプションで攻めないといけない。
世界を相手にした時に、リーグ戦でズレを作っていた外国人選手のような役割をできる日本人選手がいないのであれば、日本が世界と戦うためにはピックプレー(スクリーン)からズレを作ってチャンスメイクをすること一番必要な方法だ。』

というアドバイスがあったんですね。
それに強く共感したこともあって、今のシステムを構築するに至りました。


Q.お話にもでましたが、東京Zでは初めて“アソシエイトコーチ”という肩書きで東頭俊典氏も加入しましたが?

ヘッドコーチとしての1stシーズン、自分一人で始めたらやりたいようにできるし思う通りにできるけど、それって果たして自分にとってプラスなのかなというのは、ヘッドコーチになった当初から自分の中では疑問でした。
そんな中縁あって東頭コーチと話す機会があり、色々な偶然も味方して一緒に戦うことになりました。

自分一人で悩んで答えを出して結果を出す、という経験の中で得られるものも大きかったと思います。ですが、今の僕にとって一番必要なのはバスケットボールに対するより高いレベルの知識だと思ったので、東頭コーチはまさに適任でした。
アメリカでの留学経験に加え日本代表やNBA、その他様々なチームでの経験と知識の量は僕が知る限り群を抜いていると思います。
自分より年齢が上で、さらに経験も知識も豊富な人を部下にして仕事をすることに抵抗を感じる人も中にはいるかもしれませんが、今の自分に必要なのは体面でも肩書きでもなく、やはり〈知識〉と〈経験〉なので、僕はそんなことは全く思わなかったですね。

実際に色々なことを決断するのはヘッドコーチである僕なのですが、その過程で東頭コーチは判断するために必要な情報やリスクを色々提示してくれるので本当に助かっています。仕事をする中で非常にプロフェッショナルな考え方ができる人なので、チームの中でのパワーバランスや役割をしっかりと理解もしてくれていますし、小野さんが日立サンロッカーズ(現サンロッカーズ渋谷)でヘッドコーチをしていた時にアシスタントコーチをしていた経験もあるので、どこか共通する感覚があるのも大きいですね。
仕事やバスケットボールに対する考え方が似ていて、僕は最初から馬が合ったと思っています。
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Q.昨シーズンから半数近く選手は残りましたが、全て1からということで大変な部分も多かったと思うのですが?

昨年までと全く違うシステムになって、今まで攻撃の起点にならなかった選手が起点にならないといけないし、リングに対してアタックしたりしないといけない。勝負所で外国人選手に任せていた場面で自分達が試合を決めにいかないといけないかもしれない。
今まで経験してこなかったプレーを強いられ、さらにその中で最良な判断を迫られることは、選手達にとっては慣れるまではかなり大変だったと思います。これまでの競技人生で学生時代含めて試合時間残り3秒で逆転のラストショットを任せられた経験がある選手はうちにはあまりいないと思います。
でもその選手が今シーズンは大切な場面で起点にならないといけない。一つのプレーに対しての責任は当然大きくなりますが、それでも強い気持ちを持って時には外国人選手を相手にリングに対してアタックできるか、チャンスメイクができるか。
そこのマインドセットをするのに一番時間がかかったのではと感じています。


Q.チームの方向性も定まり、最初の公式戦となる8月のプレシーズンマッチでは勝って勢いをつけたかったと思うのですが?

どこまで新しいシステムが形になっているかを確認するべき場だったのですが、結果として30点差の惨敗となりました。正直チーム内でも『このやり方でいいのか』という空気感といいますか、不安感が選手から出ていたと思います。
でも幸いにもプレシーズンマッチの直後に合宿を設定していたので、そこで全員でより多くの時間を共有して、まずはチームビルディングを徹底的に行うことから始めました。
スタートして間もなかった頃でもあるので、一緒に戦う仲間がどういうバックボーンを持っていて、どういう考え方をしていて、これまでどういう人生を歩んで今があるのか。
そういったことをお互い理解するために、選手にスピーチをしてもらったり、毎晩ミーティングをしてコミュニケーションの時間を多くとるようにしました。
変に技術論に走るよりは、まずは一つの“チーム”としてまとまることが先決だと思ったんですよね。

その上で、プレー面においても『新しいシステムが悪いのではなく、ここの判断が悪かった・ここのアジャストができていなかった』ということを説明しながら理解をさせて、一つずつ詰めていく作業も行いました。
もちろんこう言ったテクニカルな部分は僕だけでは正しい方向に導くことが難しいこともあるので、東頭コーチにも色々話を聞いたり、相談して助けてもらいながら、文字通り東頭コーチと選手達とで一つずつ作り上げていきました。

負けて良かったということはないですが、プレシーズンマッチの惨敗があったからこそ、しっかりとチームビルディングができましたし、チーム間での信頼関係も築けたので、少しずつ道筋はできてきたと思います。
天皇杯2次ラウンドでは信州ブレイブウォリアーズに負けはしましたが、プレシーズンマッチの時に比べるとプレーの判断や質は向上しました。選手自身もシステムが噛み合っていく感覚が少しずつ掴めていったと思います。同じ負けでも山形戦の時とは大きく違って選手自身が得るものが大きかった試合だったと思います。
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※後編に続く