#35 高山師門 -昨シーズンの苦悩と原動力-
昨シーズン中地区3位と、B1昇格争いには食い込めなかった東京Z。今シーズンも引き続きキャプテンを務める高山が、昨シーズンの苦悩と、原動力を語った。
昨シーズン初めてキャプテンを務めた高山。キャプテン2年目となる今シーズン、ようやく役割が見えてきた。「ヘッドコーチが見ている道を読み取ってみんなに伝える、ということがキャプテンの役割だと思う」。小野・前HCから斎藤HCに変わったことで、練習やプレースタイルにも変化があるという。チームが勝つために、メンバー全員から意見が出るのが一番だが、そう簡単にはいかないときもある。「自分はチームメートに意見を伝えやすい位置にいる」。最近は「自分の中で、気づいたことがあれば、まずは行動してみる」と、積極的に意見を発し、行動することを心掛けている。チーム内での役割を理解し始めたところだ。
「普段から仲がいい」という東京Zのメンバー。だが、「仲がいいからこそ、もっとコートの上では激しくやりあってもいいと思う」と、高山は語る。勝つために何が必要なのか、どうしたらいいのか、キャプテンとして必死に模索している最中だ。
一方で、キャプテンは「責任感が違う。チームがうまくいかないとき、なおさら苦しかった」と、苦悩も感じていた。昨シーズン、なかなか勝利を挙げられなかったとき、キャプテンとしての重圧に苦しんだ。何か変えなければいけないとわかっていながらも何もできない自分がもどかしかった。誰よりも勝ちたいと思っていたのは高山だった。
『世界に通用する日本人選手を輩出し、日本代表が世界で勝利することに貢献する』、という東京Zのチーム理念。「前よりも今の方が、コートの上で日本人が求められている」。だが、このプレースタイルで勝つことができなければ何の意味もない。「結果が出てこそ意味がある」。
11月のアウェーでの秋田ノーザンハピネッツ戦。昨シーズンまでB1でプレーしていた相手に、白星を挙げることができた。それまで連敗していただけに、この1勝は大きなものとなった。「それまでもったいない試合が多かったが、成功を積んだことで、自信が出てきた」と高山。結果を残せたからこそ、勝つということが鮮明に見えたという。「自分たちのプレーをしっかりやればどこにでも勝てる」。結果で示したこの1勝で、確実に手ごたえをつかんだ。
高山のそばには、いつも試合に来てくれる母の存在があった。「客席からみんなを明るくしてくれる。でも普段から『あそこでシュート打ったら』とかって言われる(笑)。でもバスケが分からない人からの意見なのでありがたいです。むかつくことも言われるけれど、信じて励ましてくれる」。誰よりも高山の味方である母の応援する姿を、高山はコートで感じ取っていた。
プロ1年目からある『シモン、カモン』という掛け声。最初はバラバラで、聞こえないくらいだったこの応援も、今では東京Zの定番となっている。「最初は客席からざわつきもあって、掛け声もひどかったです(笑)」。しかし今ではファン全員が一体となって叫ぶ、チームになくてはならない応援の一つとなっている。
そんな高山の原動力は「みんなです(笑)」。
東京Zに加入して4年目となった高山。「4年目だから、ということは特にないけれど、感じることや、見えることは増えました」。昨シーズン最後のホームゲーム、「いつかはこの会場を満員にしたい」と思っていたホームアリーナの大田区総合体育館を、ファンで埋め尽くした。見たことのない光景に高山は「誰よりもうれしかったと思う」。それは、ずっと東京Zにいる高山だからこそ、感じることができたことだった。「みんなが応援してくれて、喜びを一緒に共有できること。これが一番の原動力」。
家族やファン、すべての人の声援が高山の力になる。