TAKU’s BRAIN vol.3 TAKU流番狂わせの起こし方 「How to GIANT KILLING」
皆さんは「ジャイアントキリング」という言葉を聞いたことがありますか?
サッカー漫画の題名にもなっているので知っている人も多いかと思いますが、日本語でいうと「番狂わせ」とか「金星」と言う意味になります。
同義語に「アップセット」と言うのもありますが、格下のチームが総じて絶対的に有利だと思われる格上のチームに勝つことを言います。
スポーツ界で言うと、サッカーの天皇杯等でアマチュアがプロに勝ったり、高校生が大学生に勝ったりすることがありますが、そう言った時に良く聞かれる言葉ですね。
他にも相撲だったり高校野球の場面等でもしばしば見られる、スポーツの醍醐味の一つだと思います。
ジャイアントキリングが起きにくい、バスケの競技特性
しかしバスケになると、格下のチームが格上のチームに勝つと言うニュースは、なかなか聞かないのではないでしょうか。
なぜかと言うと、それはバスケットボールが「点を取る」スポーツだからです。(あくまでも個人的な見解です。)
サッカーは「点を守る」スポーツなので、極端に言えば全員で自陣のゴールを守ってワンチャンスで点を入れれば勝つことができます。
シュート1本で勝つことも可能ってことですね。
同じように野球もエースが無失点に抑えて、味方にホームランが1本出れば、ヒットがそれだけでも試合には勝つことができます。
野球にもサッカーにも「1点を守って」と言う表現があるのはその為ですね。
ところが、バスケットボールはルール上24秒以内にシュートを打たないといけないので、両チームとも攻める回数は1試合で平均60~80回にもなります。
そうなると、相手を無失点に抑えると言うことはほぼ不可能に近く、どうしても点数の多さを競わなくてはいけないために実力差が出やすくなってしまいます。
これが他のスポーツに比べてバスケットボールでジャイアントキリングが起こりにくい、また起こしにくい理由です。(重ね重ね言いますが、あくまでも僕個人の見解です。。。)
では、バスケットボールで格下のチームが格上のチームを倒すにはどうすれば良いのか?
TAKU’s BRAIN、第3回目の今回は「ジャイアントキリング」について僕なりに話したいと思います。
TAKU流 ジャイアントキリングの起こし方
バスケットボールの試合は、さきほども言いましたがシュートの回数がとにかく多いスポーツです。
従ってシュート数が増えれば増えるほど、実力差が出やすくなってしまいます。
逆にシュート数が少なくなればなるほど、一本当たりの確率が重要になり、実力差が出にくくなる、と言えます。
つまり格上のチームに勝つためには
「シュートの回数を減らす」
「相手のシュートの確率を下げる」
「自分たちのシュートの確率を上げる」
これが重要なキーワードになってきます。
具体的な数字を例に挙げながら、実際に比較して話をしていったほうがわかりやすいですね。
例えば、去年のNBAチャンピオンのサンアントニオ スパーズとアースフレンズ東京Zが試合をしたとしましょう 。
いつか実現したら良いなーと言う願望も含めて(笑)
打倒スパーズ!
スパーズはシュートの回数が平均で80回、東京Zは70回。
シュート確率は、スパーズが65%、東京Zは45%だと仮定します。
この時の得点は
【スパーズ】 104点
(シュート回数80回 × シュート確率65% × 2点 = 104点)
【東京Z】 63点
(シュート回数70回 × シュート確率45% × 2点 = 63点)
となります。
※計算がめんどくさくなるので、今回はシュートは2点のみ。3Pシュート、フリースローは考えないで計算します。
100点ゲームで得点差は41点!!
うーーん、ぼろ負けですね。。。
ではここから東京Zがスパーズに勝つためにはどうすれば良いのか?
机上の空論ではありますが文字で戦っていきたいと思います。
Go Win Z!!!
勝利のための施策 ?相手のチャンスを減らす?
まず最初にも言いましたが、シュートの本数が多いと実力差が出やすくなるので、攻める回数を減らす努力をする必要が有ります。
そこでまず下の3つのことを徹底してみましょう。
?速攻ではなく遅攻で攻める
自分たちのオフェンスはなるべく時間をかけてゆっくりと攻め、試合時間を少しでも多く使うように心がけます。
バスケットボールは野球と違って時間が限られているスポーツなので、攻撃にたくさん時間を使えばそれだけ相手チームが使える時間も少なくなり、その結果シュートの本数を減らすことができます。
ポイントガードの腕の見せ所ですね。
?オフェンスリバウンドをとられないようにする
向こうのインサイドはダンカン、スプリッター、ディアウと超強力です。
オフェンスリバウンドを取られると必然的に相手のシュートチャンスが増えてしまうので、シュートを打たれたら必ず全員でボックスアウトを徹底して、ボックス内(制限区域の中)には死ぬ気で人を入れないようにします。
?速攻につながるミスが起きたらファールで止める
速攻は「簡単に」しかも「短時間に」2点取られてしまうので、なんとしても避けたいところ。
パーカーやジノビリにスティールされたら、速攻が出る前にすぐにファールで止めてスローインにします。
まずこの3つを徹底することで、シュートの本数は以下のようになるとします。
?→お互いのチームのシュート本数 -10
?→スパーズのシュート本数 -5
?→スパーズのシュート本数 -5
そうすると両チームのシュート回数と得点は以下のようになります。
【スパーズ】 80回 → 60回
(シュート回数60回 × シュート確率65% × 2点 = 78点)
【東京Z】 70回 → 60回
(シュート回数60回 × シュート確率45% × 2点 = 54点)
これだけで得点差は41点から24点に縮まりました。
シュート回数を減らすだけで、シュート確率は変わらなくてもこれだけ点差が少なくなると言うことですね。
勝利のための施策 ?相手を抑え、自らを活かす?
でも勝つためにはまだ足りません。
もう少し戦術的なことをさらに3つ加えてみます。
?相手に確率の高いイージーレイアップやノーマークのシュートを打たせない
マンツーマンとゾーンDFを複数用意する等してシュートセレクションを悪くさせ、相手に確率の低いシュートを打たせます。
パーカー、ジノビリに簡単にレイアップにいかれたり、ベリネリ、グリーンらにアウトサイドシュートをノーマークで打たれないように、チームとしてDFを頑張る必要があります。
?トラップDFを要所要所で仕掛けて相手のTOを誘発する
相手のTO(ターンオーバー)の数を増やせれば、それだけ自チームのオフェンスの回数を増やすことができます。
トラップするチャンスがあれば積極的に仕掛けて、パーカーやミルズのTOを誘いたいところです。
?自チームのTOを極力減らして良いシュートを打つ
相手のTOの数を増やせても、自分たちのTOを減らさないと攻める回数はあまり増えません。
その為にリスクがあるプレーは極力避けて、まずはTOを減らす。
そして、オフェンスではスクリーン等をしっかりと使い、個人ではなくチームでチャンスを作り、シュート確率の高い選手に効率良くシュートを打たせる必要があります
???この3つを加えることで、両チームのシュート確率と得点はこんな感じになるでしょうか。
?→スパーズのシュート確率が -10%
?→スパーズのシュート回数が -5 東京Zのシュート回数が+5
?→東京Zのシュート確率が +5%
【スパーズ】 シュート確率65%→55% シュート回数60回→55回
(シュート回数55回 × シュート確率55% × 2点 = 61点)
【東京Z】 シュート確率45%→50% シュート回数60回→65回
(シュート回数65回 × シュート確率50% × 2点 = 65点)
4点差で見事勝利!!!!
やったZ!!!!!
勝利のためのチームフィロソフィー
まとめると、ジャイアントキリングを達成するためには、以下の4点が鍵になります。
(再三言いますがあくまでも僕個人の見解です。。。)
■PACE DOWN
→シュートの回数を少なくさせる
■BAD SHOT
→DFでは相手に確率の悪いシュートを打たせる
■NO TURNOVER
→相手チームのTOを増やす。逆に自チームのTOは極力少なくする。
■GOOD SHOT
→OFでは確率の高い良いシュートを打つ
どれくらい格上かによっても変わってきますが、この4つをしっかりと実行できればかなり良いゲーム内容になるのではないでしょうか。
とは言えこれらの戦術はあくまでも一つの考え方です。
早く攻めるのが悪いわけでもないし、この戦術以外でジャイアントキリングができないのかと言うと、そうではないと思います。
また「アンダーカテゴリーでわざとファールをするのはどうなんだ」と言う意見もあるかと思います。
今回は僕の考えた数字と確率から論理的に書いてみましたが、本来バスケットボールのゲームには様々な要素があり、またチームに所属している選手の特徴、能力も様々です。
すべてのチームに当てはまるような「これ」といった正解はないのかもしれません。
今回挙げた戦術以外でも、試合中に起こる様々な要素が上手くかみ合えば良いパフォーマンスが出せるでしょうし、その結果ジャイアントキリングが起こることもあると思います。
チームにはコーチのフィロソフィーがあり、チームのルールがあり、チームの戦術があるので、大切なのは付け焼刃的な戦術で戦うのではなく、自分たちのチームのバスケットボールの精度をどれだけ高められるか、と言うことなのかもしれません。
僕は僕でアシスタントコーチと言う立場から、アースフレンズ東京Zに対して何ができるのか?何をするのがベストなのか?を常に考えて、残り少なくなってきたシーズンを全力で戦いたいと思います。
なんか最後は話が少し脱線してしまい自分の決意表明みたいになってしまいましたが、今回のTAKU’s BRAIN「ジャイアントキリング」はここらへんで終わりにしたいと思います。