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TAKU’s BRAIN vol.5『シアトル滞在記?世界の指導スタイル~』

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ご無沙汰しています。
 
前回のコラムからかなり間が空いちゃって本当にごめんなさい。
けっしてサボっていたわけではないのですが、色々あって更新が遅れちゃいました。
 
さて今回は、シアトルへ約3週間コーチの勉強に行ってきた時のことを書きたいと思います。
渡米中、チームのFacebookページや自分のSNSでもちょくちょく書いていましたが、改めて僕が向こうで何をしてきたのか、何を感じたのかを報告させてもらいますね。


渡米の目的は大きく2つ

まず今回の渡米のきっかけですが、”Japan Basketball Academy” と言う組織が毎年行っている『Nippon Tornadoes』と言う活動があるのですが、そこに今回僕もコーチとして帯同させてもらうことで実現しました。

Nippon Tornadoesとは、日本の選手やコーチをNBADL・NBAや諸外国のリーグにプロモートしたり、日本では感じることの出来ないNBA級のトレーニングを体感し、体得する為の活動です。

今回帯同する上で、僕にとっての大きな目的は以下の2つでした。
?Jasen Baskett氏の指導方法・指導スタイルを学ぶ
?コーチとしてSeattle Pro-Amへの参戦


そして今回のコラムは?について書きます。?は次回!!

Jasen Baskettと言う名前は、ここ何年か日本でもちょくちょくSNSやインターネット上で話題に上がっているのでご存知の人もいるかもしれません。
そもそも名前からしてものすごいインパクトがありますよね。名前が「バスケット」ですから。

Jasenが何者かと言うことは下に詳しく書きますが、シアトル滞在中の基本的なスケジュールとしては

平日午後 Jasen氏のトレーニング(バスケの練習)
平日午前(週2回) Tim Masen氏のトレーニング(フィジカルトレーニング)
平日夜 Puget Sound Leagueへの参戦(アマチュアの地域リーグ)
週末 Seattle Pro-Amトーナメントへの参戦

と言う感じでした。

ちなみにTim Masen氏は、NBA選手やNFL選手も見ているトレーナーなのですが、まーものすごいトレーニングでしたね。僕はトレーナーではないしフィジカルトレーニングの専門家でもないので詳しくは触れませんが、内容は「きつい!!」の一言に尽きます。
しかもTimは50歳を超えているにも関わらず、すべてのメニューを選手と一緒にこなすんですよ。
むしろ選手ができない内容のものも平気でやってしまうので、選手としては堪らないですよね。

Timの持っているエネルギーとモチベーションは本当に素晴らしく、見ていてものすごい刺激を受けました。
行かなきゃ分からないことは多いので、興味がある人はぜひシアトルで体験してみてください(笑)。

もちろんこのスケジュール以外にも色々な場所に行って、色々な人に会ったりしてきましたが、大まかに言うとこんな感じですね。

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Jasen Baskettとは

taku5-4.jpgJasen Baskett

アメリカのワシントン州シアトルでEmerald City Basketball Academy(通称ECBA)と言う、生徒が800名を超えるアカデミーを運営。

アメリカのバスケの主流は「パワー」と「スピード」だが、Jasenは東洋の武道や考えを取り入れた独特の理念を持ち、パワーに頼るアメリカのバスケットとは一線を画した、身体能力のハンテ?ィを 『スキル』と『身体の使い方』て?克服する指導方法をとる。パワーや身長、スピードに頼らないバスケなので、世界と比較して身体能力に劣る日本人には非常に馴染みやすいスタイルとなっている。
現役のNBA 選手ではアイサ?イア・トーマスやシ?ェイソン・テリー、スヘ?ンサ ー・ホース?なと?がECBA出身者。

そんな有名なコーチであるJasenなので、正直初対面はちょっと緊張しましたが、非常に情熱的で物事を的確に分析するコーチだなー、と言うのが第一印象です。
あとは写真にもある通りちょっとぽっちゃりしていました(笑)。

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彼の運営しているアカデミー『ECBA』は、フルコートが2面とハーフコートが1面と言う、日本では本当に考えられないくらい良い環境の私営の体育館で行っていて、見たことがない器具なんかもたくさんありましたね。
しかも驚くことに、Jasenが自分で作っているらしいです。

元々僕は2年くらい前にJasenの存在を知って色々と調べるようになったのですが、彼は自身の独自の理論に加えて写真のような道具を色々使ってバスケを教えるんですよね。
もちろん道具を使わないで教えることもたくさんありますが、バスケの中で起こりうる様々なシチュエーションを想定して道具を活用するというのは、あまり日本では見受けられない指導スタイルだと思います。

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子供って、特に年齢層が若くなればなるほど理屈を伝えてもあまり理解できないことが多いと思うんです。
(もちろん違う子供もたくさんいると思いますが、一般論として)

Jasenは自分のアカデミーの子供達には特に理屈とか理由の説明を細かくせずにまず練習をさせます。
道具を使ったり、練習メニューを工夫することによって、「いつのまにか必要な技術が身についている」「身体能力に頼ることなくバスケットボールが上達している」という結果を引き出すようにしているようです。
空手で言う「型」のように、スキルの引き出しがどんどん増えていくイメージですね。

そしてもう一つ。
Jasenは練習をさせる時に1つのメニューや1つのドリルで「10本連続」とか「一つのメニューを10分近く」と、かなり反復させる練習スタイルをとっていました。
余談ですが、アメリカ人って飽きっぽい性格なのかと思っていましたが、バスケのメニュー展開は、おそらく日本よりもかなり徹底した反復練習が当たり前のようです。日本では2?3本やったら逆とかが結構多いのではないでしょうか。これはアメリカに来ないと分からないことでしたね。

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で、その反復練習で必要なスキルをシチュエーションごとに学び、それをゲームでアウトプットする。
アウトプットが失敗したら、それはそのシチュエーションで使うスキルの選択を間違えたのか、スキルがまだ完全に身についていなかったかのどちらか。

ですので、Jasenは生徒を全然怒りません。
「何がダメで失敗したのか」「どうするべきだったのか」をしっかりと生徒の目の前で論理的に伝えます。
日本の学生の試合会場等でしばしば見受けられるような「お前なにやってんだよ!!」とか「なんでそこでミスするんだよ!!」と、遠くから抽象的に怒鳴ったりするようなことはしません。
ミスには必ず原因があるので、その原因を見つけて問題を解決する手助けをする。

至極当たり前のコーチングなのですが、それを自然と論理的にできるからこそ、みんなJasenのことを信頼しているし、理解も早い。
短い滞在期間でしたが、良い人間関係・信頼関係が構築されていて良いサイクルになっているなーと感じました。

選手とコーチの関係性は子供もプロも同じだと僕は思っていて、その関係性の中で一番大切なのは信頼関係だと思います。いくら「バスケの知識」と「バスケ技術」が超一流でも、「信頼関係」を選手と作れないコーチは良いコーチとは言えません。
これは日本もアメリカも同じで、「知識」や「技術」よりも大切なことがコーチにはやはり求められるんです。
頭ではわかっていたことですが、アメリカでもそういった一面を垣間見ることができたのは、自分にとって大きな収穫でしたし、いろんな意味で自信にもなりましたね。
とは言え「知識」や「技術」に限界はない訳で、その点はコーチの仕事をする以上ずっと学び続けないといけないですし、「ヒューマンスキル」も常に磨いて誰とでも信頼関係を構築できるよう努める必要性があるなと改めて思いました。

 


Jasen Systemについて

Jasenは、個人のスキルトレーニングからチームトレーニングまで、幅広くなんでも対応しているのですが、今回僕らはSeattle Pro-Amに参戦するため、チームとしてのトレーニングがメインだったので、ほとんどがチーム練習の時間でした。
特に『Jasen System』と呼ばれる、Jasenオリジナルのオフェンスシステムの練習に大きく時間を割きましたね。

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バスケットボールの試合って、一見選手がバラバラに自由に動いているように見えるのですが、特にプロになると実はほとんどがルールにのっとって動いているんですよね。
そのルールや考え方はチームによって本当にまちまちですし、選手が自分で判断して自由に動く時ももちろんあるのですが、レベルが上がれば上がるほど基本的にはすべての選手がルールのもと動いていると言っても過言ではないと思います。

それがチームのスタイルやヘッドコーチのスタイルになるわけですが、スタイルによっては勝敗に影響を大きく及ぼすことも少なくありません。
だからこそ、どんなルール(システム)を採用するかというのはチームにとって非常に重要なんですよね。

Jasenのシステムに話しを戻すと、彼のシステムは基本的にはベーシックな形が一つあるだけで、プレーのエントリーはすべて同じでした。
一つだけ?って思う人もいるかもしれませんが、そうです。一つしかありません。

ただし、ディフェンスの状況やシチュエーションが常に変わってくるのがバスケットボールなので、その都度その都度で選択するプレーは必然的に変わってきます。
要はオフェンスの最初のきっかけの動きは毎回すべて同じだけど、ディフェンスによってプレーが柔軟に変わってくるシステムと言うことですね。
シンプルですが戦術理解がチームとして深まれば深まるほど、色々なバリエーションが出てきて面白いものになるオフェンスで、柔軟な考え方をしているJasenらしいシステムだなーと思いました。 そして実は、この練習をしている時に日本とアメリカの差を強く感じた部分がありました。

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考える力の差

それは選手が自分自身で考える力の差です。
簡単に言うと日本人は言われた事に対してはきちっと忠実にやりますが、それ以外のことはあまりやろうとしません。
やってはいけないと思ってやらない人もいるだろうし、そこまで考えが至らない人もいると思います。

ディフェンスに対応されて守られようが、失敗しようが、とにかく言われたことは一生懸命にやろうとする。

それが日本人の多くの特徴なのかな、と。

それに対してアメリカは、選手自らが判断して「こっちの方が良いな」「こっちの方がうまくいくな」と考えてプレーする傾向が強いと思います。
場合によってはコーチから言われたプレーと違うことをするケースもあります。
日本からしたらちょっとズルしているように見えたり、場合によっては自分勝手に見えるかもしれないですね。

でもうまくいかなかったとしても、アメリカでは自分で判断してプレーを変えた「行動」が悪いのではなく、「判断」が悪かったんだと言うことになり、行動を責めるのではなく判断をアドバイスします。

そもそもバスケットボールの目的は、コーチに言われた通りのプレーをするのではなくてリングにボールを入れることですから、そっちの方が自然といえば自然ですよね。
大切なのは目的に向かうシステムの中でどれだけ自分のプレーを生かせるか、どれだけ良いプレー・良い判断ができるか、なんだと思います。

「集」の前にまず「個」の力。
「個」が強くなれば「集」も自然と強くなる。

もちろん日本にもこういったことが当たり前にできる選手はたくさんいると思います。
あくまでも傾向の話としてですが、それでも「良い判断をしたかどうか」ではなくて「コーチの言った通りのプレーをしているかどうか」で評価されることは日本の方が多いと思います。

部活動が主流の日本では、「コーチ = 先生」がほとんどかと思います。
そこでは「シュートを決めた」ことではなく「コーチ(先生)の言った事をできた」ことが評価につながっていないでしょうか。
コーチの言うことは大切だし、守るべきチームのルールやシステムももちろん重要です。
しかしだからと言ってプレー中に自分で判断できない選手が多くなってしまっては、チームとしてなかなか強くはなれないと思います。

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世界基準と言う意味では、こういった考え方や行動も重要視して成長していかないといけないなと感じました。
学生であろうとプロであろうと、日本では忘れがちなことだと思います。
自分のやっていることに疑問を持って、しっかりとプレーの意味を考えながら練習すれば、世界はより早く近づいてくるんじゃないでしょうか。

これはプレイヤーに限らず我々コーチも同じですね。
日々、情報をアップデートしてより高みを目指せるように頑張らなければいけないな、と思います。

バスケットボールの男子日本代表の世界ランキングは48位(アジア8位)です。(2016年1月現在)
女子はオリンピック出場を決めていますが、男子はモントリオールオリンピック以来出場できていません。
早く世界選手権やオリンピックで日の丸をつけた選手が活躍する日が来るためにも、こういったアメリカで得た経験や学んだことを積極的に子供達や選手達に伝えていきたいと思っています。