世界への挑戦ースキル編ー
皆さんは「スキルアップトレーニング」とか「ワークアウト」って聞くと何を思い浮かべますか?
最近では日本でも「スキルコーチ」という言葉が定着してきて、世界的に有名なギャノン・ベイカー氏が来日したり、Bリーグの各チームでもスキルを担当するコーチが増えてきたり、だいぶ親しみが増えてきたと思います。
しかし、スキルトレーニングとは、どのように行われているのでしょうか?シーズン中もただずっとたくさん練習を激しくすれば良いのでしょうか?実はそうではない、と断言しているNBAコーチが多数存在するのはご存知でしょうか?
これらの話をしていくためにまずは自分がこれまで研究してきた道のりを振り返らせてください。なぜ自分が「スキルアップ」が必要だと感じたか、そのために何をこれまでしてきたか、6年という歳月をかけて今何が見えてきたか。。
日本の現状
時を遡ること2010年、自分が日本代表に関わらせてもらったことから、今の研究が始まりました。
2010年から2年間、A代表からアンダーカテゴリーまで全ての代表チームのアシスタントコーチとして、アジア選手権や世界遠征、トルコで行われた世界選手権の視察に行ったり、英語も話せたため、協会を代表しての会議やFIBAの要職の方と直接話をしたりする機会に恵まれました。通訳の兼任や、情報分析チームの特別アドバイザーとして今も行われている分析の骨子を作ったり、素案や主にスタッツ部分の大枠の作成に携わりました。
端的に言えば、日本の強化はこうなっています。
若い世代で発掘、育成をして、トップチームでは「チーム戦術」の落とし込みをする。15歳や18歳でしっかりと有望選手を見つけて、早くから育てる。そうして成長した選手をA代表で戦術を与え、世界で勝っていく。
当時の日本代表には日本人初のNBA選手だった田臥勇太選手や、得点マシーンである川村卓也選手、既にベテランの域に達していた竹内兄弟などそうそうたるメンバーが揃っていました。ヘッドコーチは現横浜ヘッドコーチのトーマス・ウィスマン氏が務めていました。
ウィスマンコーチは、2009-10シーズンにリンク栃木ブレックスを優勝に導いたのち、専任ヘッドコーチとしてバスケットボール男子日本代表に就任し、それまで20人ちょっとの候補選手にとどまっていた選考の幅を大きく広げ、富樫勇樹選手(当時15歳)、渡邊雄太選手(当時17歳)をA代表候補に抜擢。当時無名でユニバ代表候補にも入っていなかった鎌田裕也選手も候補に入れるなど、40名を超える候補選手を発表し、「日本代表への意識」を若い世代にも植え付けました。
日本が強くなるために ー世界を見てわかったことー
イギリス代表チームや、香港のナショナルチームで実績を残していたウィスマンコーチは、日本人にあった戦術を遂行。
しかし、2年目のアジア選手権では怪我やいろいろなアンラッキーも重なったとはいえ、7位。私が担当していた相手チームのスカウティングや自チームの試合のレビューなども深く反省しましたが、辿り着いた結論は、「個の力の強化」が足りなかった、という結論でした。
システムでオープンシュートを作ったり、ペイントエリア内でのシュートを創造しても決定力に欠ける。いくら選手が協力して献身的にボールを回して綺麗なシュートやチャンスを作っても、なかなか点数に繋がらない。ハードにプレーしているし、組織としてプレーもしてる。でも勝てない。
そのジレンマをどう脱却するか?そのためにオフェンスのシステムを試しにデンソーアイリス(女子)へ行き、大阪エヴェッサ(bj)へ行き、新たにヨーロッパのシステムと教え方を学ぶためにトヨタ自動車アンテロープス(女子)へ行き、転々と渡り歩きながら「代表が勝てるオフェンス」を模索するとともに、「個の力の強化」方法を、試行錯誤したり、海外に学びに行ったりしながら探求してきました。
そうしていく中で、世界で勝つために必要なスキルは整理はできました。何が足りなくて、何をすれば良いのかもわかってきました。それなら、「そのスキルを教えればいい」、「練習して身につければいい」という結論に辿り着きます。
しかし、
Bリーグではレギュラーシーズンだけで60試合。プレシーズンマッチや天皇杯、プレーオフも含めれば年間80試合近く、代表選手はさらに10~20試合をこなしています。つまり年間100試合近く、3日~4日に1度は試合をしています。
その状態で練習をさせると怪我のリスクが上がる。しかし個の成長はしなければいけないという問題にぶつかりました。
「シューティングパッケージ」と「個別フィードバック」の可能性
その答えとなるきっかけとなったのが、2016年に見学したユタ・ジャズのシーズン中の練習でした。
ここでは「シューティングパッケージ」と言われる練習方法が浸透していました。いかに「低負荷で、試合中に打つシュートやスキルを反復練習するか」が吟味、徹底されていました。
(元ユタ・ジャズのトレー・バーク選手のパッケージ。1試合にだいたい85~90ポゼッションある中で(NBAだと試合時間が長いためもっと多くなる)試合では同じシュートを連続で打てないので、ほぼ毎回シュートの種類が変わっている。負荷は低い)
さらに、このパッケージの横で何が行われているか、見渡してみると、コートの至る所でアシスタントコーチと選手が一対一で試合の動画を見ています。
1試合にだいたい85~90ポゼッションある中でオフェンスでもディフェンスでもよくできたところ、もっと向上できるとところ、それを一つ一つ丁寧に伝えながらコーチングしているわけです。
こうして選手個人個人の「シューティングパッケージ」で身につけたスキルを、試合の局面でどうやって使っていくのかを「個別フィードバック」することで、低負荷でもシーズンを通して選手のスキルをアップすることができるのです。
世界の技術を東京Zへ
アースフレンズ東京Zでは、「シーズン中にいかに低負荷で、かつ選手のスキルアップを図るか」を考え、世界から学んだ「パッケージ」の導入と「フィードバック」の導入を行っています。こうすることにより、従来の「個人のスキルアップはオフシーズンか、若年層で行うもの」という考えから脱却し、「シーズン中にチーム作りと個人スキルアップを同時進行で行う」という挑戦をしています。私は、NBAやヨーロッパで当たり前に行われていることならば、日本でも達成できると確信しています。
アジア選手権で7位になってから6年。自分が探してきた答えは少しずつ形になって見えてきたし、それに同調してくれるチームスタッフや、選手、また、学びたい、練習見学に通ってくれるコーチや学生も少しずつ増えてきました。
アースフレンズ東京Zは今後もバスケットの発展に繋がる情報はどんどん発信していきます。また、この気づきを若年層から普及するために、学生コーチにも共有していきます。そして、チーム発足当初から続けてきた「世界チャレンジ」を今後も続けていきます。
この先も応援よろしくお願い致します。